amedotのブログ

呪術廻戦の考察を主に書きます

【呪術廻戦】「双子の凶兆」と「相伝の術式」で見える、御三家の歪み。

加茂、禪院、五条
その三家で構成される「御三家」
 
彼らを名家たらしめるは
「名(血統)」「力(呪い)」
 
「名」を継承し続けるのは自由だ。
しかし「呪い(術式)」相伝し続け、
人も、世界も、家も。何も歪まない。
そんなことあるのだろうか?
 
望みのままに世界を変えられるなら、
その力を「呪い」とは呼ばない。
「祝福」だ。

ネタバレ範囲は0~24巻、加えて公式ファンブックです。

 

 
【目次】
 

【御三家】

まず御三家について軽く解説を行う。
 

≪加茂家≫

御三家の中で一番の名門「加茂」
呪術上層部との関わりも深い。
が、”爛れた”浮気相手、しかも非術師の子供を次期当主に据えるほどの「人材不足」であり、相伝の術式に対する歪な「執着」を見せている。

呪術廻戦公式ファンブック/芥見下々
伝統と様式を重んじる加茂家では、血を自在に操る「赤血操術」”ふさわしい”相伝の術式として扱われている。
 
加茂の血と確定しているのは、
加茂憲倫(羂索)
加茂憲紀
九相図(脹相、壊相、血塗)

(虎杖(九相図と関係はあるらしいが詳細不明)) 
 
 

≪禪院家≫

準一級以上の呪術師が12人
それ未満の呪術師が9人
非術式持ち、数十人の雑兵。

呪術廻戦4巻/芥見下々
凶兆であり、女性、かつ非術師である真希ですら強ければ当主になることを否定されていない(その気が本当にあったかはさておき)ことから、伝統、様式、継承を重んじた加茂家に比べると相伝の術式』への執着は薄いが、それでも禪院も同様に「血」「力」の継承を重んじている。
 
禪院の血を有するのは
禪院直毘人、直哉
伏黒甚爾、恵
炳、灯、躯倶留
 

五条家

天元の同化を守る、「六眼」を最低でも2回継承している名家。祖先に三大怨霊である菅原道真を持つ。
悟以外の五条家は未登場であるため、家の特色は分からないが、直系の五条悟(現代最強)、遠縁の乙骨憂太(現代二番)、先祖の菅原道真(三大怨霊)を考えると、跳び抜けた特殊な才能が発生しやすい家系であることが推測される。
また、現在は悟主導で動く家であるため、他の二家に比べれば保守的思想は薄い家であると考えられる。
 
菅原道真(五条家)の血をもつのは
五条悟
乙骨憂太
 
 
ここまでまとめると、「御三家」とひとくくりにしても一枚岩ではないことが分かる。
この「差」が今回の本題だ。
 
 

【呪いと祝福】

あなたは恋をする。
他は目に映らないほど熱烈に。
 
あなたは力を有する。
「他者を惚れさせる」力。
しかし好きな人には嫌われる。
 
この力をあなたは、
「呪い」「祝福」
どちらで呼びますか?
 
多くの人が言うはずだ。
「呪いだろう」と。
 
「人を呪わば穴二つ」
そんな言葉があるように。
天に唾吐けば顔にかかるように。
『呪い』は願望成就では終わらない
 
「呪い」「祝福」の差はここだ。
 
まぁ、ごくまれに「呪い」で生まれる不幸を無視することで、「祝福」と呼ぶ者もいるのだが

それが「御三家」かもしれない。

 

【呪術師に悔いのない死などない】

呪術廻戦1巻/芥見下々
夜蛾学長は言う。
「呪術師に悔いのない死などない」と。
 
当然だ。
「呪い」は一般人に秘匿される。
人を救い続けても、名声は得られない。
悪意に塗れ、血に塗れ。
自分が終われば先へ、後ろへ。
永劫のリレー。

呪術廻戦19巻/芥見下々
その道を望んで選んだ者もいる。
しかし、何も見えない闇の中、
まっすぐ歩けるものなどいない。
「なぜ術師をやっているのだろう」
「自分は必要ないのではないか」
そう考える。
 
死は鏡。
自分を前に嘘は吐けない。
 
 

【継承】

御三家は「呪術師」の家系。
強力な「呪い」「血」を紡ぐ。
ここまで読んだあなたに問おう。
単なる繁栄が彼らを待つのだろうか?
 
 

【狗巻家】

話は飛ぶが、
狗巻家は「呪言」相伝している。

呪術廻戦公式ファンブック/芥見下々
「呪言師の家系」と呼ばれるのなら、
呪言を主に受け継いできたのだろう。
 
何故「呪言師の家系」なのだろうか。
御三家は多種の相伝術式を持つ禪院家はともかく、加茂家ですら禪院には及ばずとも複数の相伝の術式」を持つことが示唆されている。
 
どうして相伝の術式」の幅に
差があるのだろうか?
 
 

【加茂家】

相伝の術式」
つまりは先祖から継承した術式。
その幅に差がある理由。
それは単純に2つだろう。
①閉鎖的な家かどうか
②非術師の家系が術式に目覚めるのは珍しい
 
術式の発現経路は主に4つ。
直接遺伝(例:禪院直哉)
⇒親の術式をそのまま継承。
 
隔世遺伝(例:五条悟、伏黒恵)
⇒先祖の術式をそのまま継承。
 
変異遺伝(例:壊相、血塗)
⇒親の術式ベースに変異して継承。
 
覚醒発現(例:東堂葵、七海建人)
⇒先祖関係なく唐突に術式に目覚める。
 
この中で先祖の術式ではない、「新しい術式」に目覚める可能性は「変異遺伝」「覚醒発現」、そして他家からの「遺伝」しかない。
 
それが狗巻家が「呪言師の家系」と呼ばれる理由だろう。ただでさえ呪術師を絶やしていこうとする家系。他家からの遺伝(呪術師との結婚)を是とするとは思えない。呪術師を減らそうとしているのだから変異遺伝隔世遺伝で術式を覚醒した場合も、それを相伝の術式」とはしなかった。
閉鎖的な家だから、
狗巻には「呪言」だけ。

呪術廻戦公式ファンブック/芥見下々
そして、加茂家に人材が不足している理由も発現経路によるものだろう。加茂家は伝統と様式を重んじる家。外部の男系の血を認めないのはもちろん、変異した術式も易々と認めることもできない。術式の発現経路を限定的にすることで、混ざり気のない血と力を有する『名家』として確固とした地位を得るとともに、可能性を狭めることで術式発現確率が下がっている。
故の人材不足だ。
 
閉鎖的な家は、
「覚醒遺伝」を認めない。
伝統ある「術式」以外を認めない。
これが相伝の術式に幅がある理由。
 
加茂家は「名家」であろうとした。
天皇が男系血統に拘るように、
皇籍から出ると苗字を得るように、
加茂家は「血縁」相伝の術式」
つまり、
お家創始者「名」「力」に拘る。
まさに「保守派」。ゆえに「名家」
徹底され形骸化した祖先への敬意。
故に得た”再現性”
それが加茂家の”歪み”
 
 

【禪院家】

相伝の術式」”歪み”から、
加茂家の特徴は理解できた。
次は禪院家だ。
禪院家の相伝の術式」は多い。

呪術廻戦17巻/芥見下々
それに「新しい相伝の術式」がある。
投射呪法はアニメーションを具現化する。その元ネタから察するに「術式」として発現したのはここ200年以内変異遺伝覚醒発現によって目覚めているはずだ。
それを相伝の術式」とする新しいモノへの抵抗の無さ。術師ではなく、女性で、なおかつ凶兆である真希ですら、実績と強さがあれば当主候補になり得る実力至上主義
明らかに加茂家の歪みとは異質。

呪術廻戦16巻/芥見下々
が、しかし禪院でも「(歴史の深い)相伝の術式」は重要視されるし、男尊女卑も色濃く残る。武器に対する価値観などを見るに、実力主義の毛色が強いとはいっても、それは「御三家(保守派)」の範疇
 
むしろその、現代的と言える実力主義「保守思考」と混ざりあうことにより禪院家の歪みは発生していると言える。
「継承」に重きを置いた加茂と違い、
貪欲に「強さ」を求める。
しかし「継承」を無視できない。
それこそが名家たる所以だからだ。
 
歪んだ実力主義が産むのは、
ヒロアカのエンデヴァーのような、
「力」への効率的渇望
 
十種影法術のような強力な術式を維持しつつも他の家からの遺伝や、投射呪法のような「覚醒発現」をも強ければ許容する。名家たる所以である「継承」を厳守しつつ。

呪術廻戦16巻/芥見下々
故に女性を軽視する。
誤解を恐れずに言えば、弱いから。
オリンピックがそれを証明する。

体育会系的な実力主義と、
女性を道具とする封建社会は、
混ざりあい、思想を歪ませる。
禪院直哉が最たる例。
 
故に禪院には「創る」「模倣する」
術式が多いのかもしれない。
エンデヴァーが自分の力を有した、
更なる才覚を産もうとしたように、
「名」「力」の継承。
「そのまま」継承した加茂と違い、
禪院は「混ぜる」ことで
行おうとしたのかもしれない。
 
それらが「禪院家」の歪み。
 

五条家

五条家は他2家とは異質な立ち位置。

呪術廻戦17巻/芥見下々
圧倒的な強さを持つ『六眼』により、天元の護衛」という役割をもって生まれてくる。
祖先には三大怨霊菅原道真
現代最強五条悟。
最強格の全盛期怨霊里香、
それを作り出した乙骨憂太。
そんな五条家を一言で表すなら
「イレギュラー」
ぶっ飛んだ天才を生む家。
 
しかし彼らの善性は担保されない。
事実、菅原道真は三大怨霊になってしまったし、五条だって歯車が違えば夏油のように狂っていたのかもしれない。乙骨憂太も、意図的ではないにしろ愛する人をこの世で一番の化け物へと変えてしまった。
運命を「呪い」に歪められた一族。
それが五条家
 
 

【因果応報】

ここまでで、
・「呪い」には不幸がつきもの
・「御三家」は強い「呪い」を継承した
・加茂家は「伝統」に縛られている
・禪院家は「力」に縛られている
五条家は「運命」を縛られている
事は説明した。
 
ここからは御三家が積み上げ続けた「歪み」を今までの描写から深堀しよう。
 
 

【加茂憲倫(羂索)】

伝統を重んじた加茂家。
そのために相伝の術式」「血統」に重きを置き、可能性を狭めることで人員不足へと陥る代わりに「名家」という地位を得た。
こんなものを「不幸」と呼ばない。

彼らの不幸といえばたった1つ。
「加茂憲倫(羂索)」の存在。
御三家の汚点。
羂索に乗っ取られた男。
 
何故加茂家は狙われたのだろう。

相伝の術式の種類が禪院に比べ少ないにも関わらず、「加茂家」を存続し続けられた理由。そこに羂索が加茂家を狙った理由が隠されているのだとすればどうだろうか。
 
加茂家は「再現性が高い」説だ。

呪術廻戦公式ファンブック/芥見下々
禪院家は多種多様の相伝の術式と、あれだけの人数子供を作ってようやく数名の当主候補。そうだとすれば加茂家が特定の術式をそのまま引き継ぎ続けるというのはかなり困難だ。
 
禪院直毘人から禪院直哉に、
野薔薇の祖母から野薔薇に、
九相図の3人が血を操る術式なように
 
「直接遺伝(親の術式を得る)」
「変異遺伝(親術式が変化し遺伝)」
この発現確率が高いのなら納得できる。

加えて加茂家の相伝の術式は少ない。
つまり変に術式が混ざる可能性も、
想定外の術式に目覚める可能性
かなり低いということになる。

そしてそう考えれば、何度も何度も特定の相伝の術式」に拘り続けた加茂家であれば、子への「”特定の”相伝の術式」遺伝確率はかなり高くなるのかもしれない。
なら羂索が目をつけた理由になる。
 
大量に子を産んでも目的の術式が得られるかは分からない禪院家では実験が失敗する確率が高いからだ。
つまり、
『引き継ぎ続けた伝統の「呪い」で、
羂索のお眼鏡に”かなってしまった”。」
のかもしれない。ということになる。
 
 

【双子の凶兆】

現状禪院家のみに居る「双子の凶兆」
(そもそも凶兆と確定しているのが禪院真希と真依しかいないが)
 
事実「凶兆」により禪院は滅びた。
これを偶然として良いのだろうか?

呪術廻戦17巻/芥見下々
「力(呪術)」に焦がれた禪院が、呪術という円環から外れた「力(フィジカルギフテッド)」に滅ぼされる。
本当に偶然だろうか?
 
同じ家にフィジカルギフテッドが2人、
同じ姿で家に仇する。
同様に愛する人を失って。

呪術廻戦17巻/芥見下々
男尊女卑呪術師びいき
たまりにたまった「業」の皆済
それを虐げられた「凶兆」が完遂
偶然なのだろうか?
 
仮にこれが禪院の「呪い」の代償。
「歪みの清算だとするなら納得だ。

呪術廻戦17巻/芥見下々
呪いの宿業から外れた禪院甚爾。
彼の子供「伏黒恵」は、
「恵まれている」のかもしれない。

【呪術廻戦】捨てられた「命の形」と構築された「刃」 - amedotのブログ

 

【歯車】

三大怨霊、菅原道真
最低二度六眼を発現した五条家
怨霊里香を生んだ乙骨。
 
祖先である道真はさておき、五条家「運命の転換点」に絡むことが多い。
羂索の星漿体殺害計画
星漿体、天内の殺害
夏油が死んだ百鬼夜行
渋谷事変死滅回游
 
運命転換点の歯車五条家
それこそが吐出した才覚生み出す、五条家「歪み」清算なのかもしれない。