これは公式ファンブックと
148話から
禪院真希が捨てるものについての
考察をした記事です。
※ネタバレ範囲は0~15巻、公式ファンブック、本誌148話を含みます。
かなり推論が多いものとなっています。
【目次】
【捨てられないもの】
才能がなく、家から半ば勘当されている禪院真希が所持しているだろうとして挙げられるものはさして多くないです。
禪院真依
自分の肉体
「禪院」の名前
これらがまず初めに浮かぶ「捨てられるもの」であると思います。ですが私はこれらは彼女がそれ以外の何かを捨てたとしても必要な「捨てられないもの」と考えています。
「まだ」とある通り、彼女が強くなりたい理由はあくまで当主になり、虐げられてきた禪院真依の居場所を作りたいからであり、そのためには当主になるための「名前」も、強くあるために必要な「肉体」も捧げることができないでしょうし、禪院真依を捨てることも彼女にはできないと考えています。
彼女の目的はあくまで「禪院真依」を守れる「当主」という地位であり「強さ」は手段に過ぎないのです。
(全盲の戦士や隻腕の戦士等、肉体の欠損によって強くなることはマンガではよくあることですが、短期的に考えれば肉体を失うことで得られる天与呪縛的なメリットより重心の変化等のデメリットの方が大きいと思います。勿論月日をかければそれでも強くなれるのでしょうが、死滅回游の状況や作者の「完結まであと2年くらい」という発言を見るにそんな時間は無いと考えるのが妥当でしょう。)
【捨てられたもの】
真希が「捨てるもの」を考える前に
他の人間が「捨てられた(失った)もの」と
それによって「得られたもの」を
まずはまとめたいと思います。
与幸吉
失ったもの:健康
得たもの:数年分貯めて放出すれば特級相当になるほどの呪力出力と広大な術式範囲
禪院甚爾
失ったもの:禪院の術式と呪力全て
得たもの:特級呪霊を圧倒する程の身体能力
七海建人
失ったもの:少しの自由
得たもの:呪力出力(120%が出せる程度)
折本里香
失ったもの:人間性(自我)
得たもの:強さ(?)
乙骨憂太
失ったもの:愛する人の安寧
得たもの:里香の魂の抑留
カラス
失ったもの:命
得たもの:多大な呪力
帳
呪力に関係するものの差し引きによって機能が変化する
つまり「縛り」として現状なりたつのは
・自立不可能なほどの不健康
・最高峰の術式と呪力
・自身への制限
・人間性
・安寧
・命
・呪力に関係するもの
これらになります。
ですが真希さんの場合、術式は既に失ってしまっていますし、呪力を仮に制限したとしてもその量は七海が制限している量にははるかに及ばないでしょう。なのでそれによる大幅な強化は見込めないはずです。そもそも呪力を操作できないでしょうし、制限すらできないと思います。
健康を失うにしても与幸吉ほどの不健康をもってしても何年も呪力をためてようやく特級レベルの出力になる程度のブーストです。しかも不健康になりすぎれば戦闘が難しくなり、逆にほどほどの不健康であれば大幅なブーストが見込めません。
愛、つまり真依を失う。これも難しいでしょう。里香は乙骨の呪力がそもそも多く、その呪力で魂をつなぎとめていました。いくら禪院家とはいえあの姉妹が同じことをできるとは考えにくいですし、できたところで感があります。それに真依が死ねば当主になる動機が減り、強くなる理由が薄れてしまいます。
命を犠牲にすることもおそらくできないと思います。真依の居場所を作るためには生きて当主になる必要があります。その役目を全て恵に押し付ければ自死をもって強化することは可能ではあると思いますが、彼女がそんな無責任なことをするとは考えにくいです。
なら彼女は
「何」を
「どうやって」
捨てるのでしょうか。
【組屋鞣造の術式】
重面春太と禪院真希がもつ呪具。
それらには呪具と所有者が
「意思の疎通」あるいは「感覚の共有」
が可能であるという共通点が存在します
何らかで所持者と呪具を繋いでいるのです
どうやってそれを行っているのでしょうか
(重面は見えない場所から刀が発見した新田さんに気付いているし、竜骨は「使い手の意図に合わせ」呪力等を噴出できるが、そのためのスイッチのようなものは現状見受けられないため、使用者と呪具の「意思の疎通」あるいは「感覚の共有」のようなことができないとおかしいはず)
傀儡操術や黒鳥操術のような術式?
おそらく違います。
呪骸のようなものであれば術者による呪力の定期供給が必要ですし、術式範囲もネックになってきます。鞣造が東京校にとらえられていたはずなのに渋谷で重面が呪具を使えていた理由が説明できません。そもそもそんな術式ならば東京校襲撃の際、使用するべきです。
つまり組屋鞣造は術式を所持していない。あるいは戦闘に向かない術式を所持しているはずです。(術式を保持していない場合は何らかの技術によって呪具使用者と呪具に繋がりを作っている)
この鞣造の能力を呪具と所持者が
「シンクロ」していることから
仮に「同調」と名付けましょう。
(術式ではなく技術かもしれないので能力とする)
その能力の発動条件は何でしょうか。
誰とでも呪具が「同調」できるのであれば乗っ取られるかもしれません。しかし例えば「触れること」を条件とするなら相手に攻撃した時点で乗っ取られる可能性が発生してしまいます。
ですが「繋がりが強い相手と特に同調する」といった芻霊呪法のような原理が働くならばどうでしょうか。
組屋鞣造はありふれたものから何かを作るというより良い素材を加工することで物を作るタイプの職人です。当然呪具制作も同様でしょう。
人間以外でも物を作るらしいですし「竜骨」は本当の竜で作られていたのかもしれません。でも「全て」使うでしょうか?骨や牙、皮や毛。色々使うでしょうがいくらかは余るはず。それらを呪具所有者に「とりこませる」ことで呪具との繋がりを強め、「同調」の条件に乗せていたとしたら?
つまり軽微な「受肉」をしていたら?
勿論そんな行為を呪力への耐性が低い真希さんが行えば無事では済まないでしょう。ですが彼女は残念ながら生命力が高い。その程度ならば耐えることができるかもしれません。(術者は風邪をひきにくい代わりにひいたとき重症化しやすいが、真希さんは風邪をひきやすいが重症化しにくいみたいな「免疫力」と「体力」の話)
ただしあくまで軽微とはいえ
耐性が低い者の「受肉」
意識が混濁するかもしれません。
九相図のように異形の姿に
変化するかもしれません。
いつ重症化するかもわかりません。
死ぬかもしれません。
そんな「リスク」と「呪具」が
彼女が選んだ道で
彼女がたった一人の姉妹を守るために
捨てる決意をしたものは「人間性」
だったのではないでしょうか。
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