呪術廻戦0の最後、
五条悟が夏油傑に向けた言葉。
分かっていることは
「はっ 最後くらい呪いの言葉を吐けよ」
という夏油の反応と、
作者の「0巻で既に言っている」発言だけ。
何を言っていたのでしょうか。
考察しました。
ついでに夏油と五条の性格も分析しました。
ネタバレ範囲は単行本0巻~9巻、公式ファンブック(公式FB)です。
特に0巻と8、9巻の重大なネタバレを含みます。
※映画呪術廻戦0のネタバレは全くありませんが映画を見て、それをふまえて考察しています。
【目次】
- 【おさらい】
- 【0巻と本編と過去編の五条悟】
- 【殺す理由】
- 【夏油が両親を殺した理由】
- 【終わった言葉】
- 【五条の覚悟】
- 【最後の言葉】
- 【余談(ここからはネタバレ範囲16巻まで)】
- ↓考察バチ当たり集
【おさらい】
呪術廻戦には3つの時間軸がある。
0巻の乙骨が主人公の時間軸
1巻から始まる
虎杖が主人公の時間軸
8巻から始まる
五条が主人公の時間軸
今回はこれらの時間軸をそれぞれ、
0巻
本編
過去編
として表します。
【0巻と本編と過去編の五条悟】
五条は夏油を逃がした日から変化した。
事実、過去編の五条は夏油を殺せず、
0巻では殺害できた。
何故か。
殺したくなった?
いいえ。
『殺す理由ができた』
からです。
【殺す理由】
五条は夏油を過去編で殺せなかったのに0巻では殺している。じゃあ、過去編から0巻の間に夏油に対する友情が薄まったのだろうか?五条にとって夏油は「どうでも良い人間」に成り下がってしまったのだろうか?
違う。
あの『青春の日々』は五条にとって重く、楽しい日々であり、そんな3年を共に過ごした夏油は今も、昔も、殺した後すらも「たった一人の親友」だったはずだ。
なら五条はなぜ夏油を殺したのか。
「親友を殺すほどの理由ができた」からだ。
五条悟には夢がある。
その詳細はまだ分からないが、後輩を育成し、何かを成そうとしている。「呪術高専の教員」として、「呪術師」として。そんな五条にとって呪術師の敵、生徒の敵、「夏油傑」は五条の敵でもあり殺さなくてはならない相手。
もちろん、できることなら殺したくはなかっただろう。100人殺したなんて全て嘘で、もう一度隣で笑っていられたなら一番良かっただろう。
蒼き春を取り戻すかのように、
また二人で笑いあいたかっただろう。
しかしそれは事実
だから五条は「夢」を選んだ。
つまり
「五条悟」にとっての「夏油傑」は、
「夏油傑」にとっての「両親」だった。
【夏油が両親を殺した理由】
夏油は過去編で両親を殺した。
しかも残穢で分かるということは
誰かに委託しているわけではない。
そして0巻では「家族」と称し、美々子や奈々子のような仲間を大切に扱っていた。しかしわざわざどうして血も繋がっていない他人を「家族」と呼んで愛しているのだろうか?
例えば夏油の本当の「家族」、非術師の両親が夏油に暴力を振るっていたりするゴミのような人間だったとしたら、夏油は「家族」という言葉に対しどんな印象を持つだろうか?
悪い印象しか持たない。
その名を愛する対象につけるだろうか?
つけない。
なら夏油にとって家族は愛し守る対象。
両親もそのうちの2人だったはずだ。
五条が驚いたのは夏油の人柄から信じられなかったのもあると思うが、もしかすると初任給で親にプレゼントしたとか、あるいは両親の良いエピソードを夏油から聞いていたりしていたからなのかもしれない。
そんな夏油が両親を殺したのは、
殺す「理由」があったから。
呪力を垂れ流し、呪霊を生む原因となっている非術師を皆殺しにすることで、呪霊によって死にゆく呪術師を救いたかった。
それが夏油の理由であり「夢」だった。
しかし両親は「非術師」
殺す対象。
殺す理由がある。
だから殺した。
夢が霞んでしまわないように
自分が逃げてしまわないように
【終わった言葉】
夏油は呪霊操術を扱う。
そして呪霊操術で操られた呪霊の呪力は
術師の物と異なる。
つまり「夏油の残穢」と
「夏油が操る呪霊の残穢」は
”別物”のはずだ。
更に夏油の呪霊操術の射程は、
東京と京都へ同時に呪霊を放つ程に広い。
じゃあ実家に残穢が残っているのは
「わざわざ直に両親を殺害した」から。
「本当は両親を殺したくなかった」
そんな気持ちがあるのなら、京都に呪霊を放った百鬼夜行のときのように、遠隔で実家に呪霊を送って殺せば、両親の死を見ずに済む。
そうすれば夏油の残穢も残らなかった。
しかし彼はその場に赴いた。
その場に居たのなら、呪霊すら介さず
その両手で親を殺したのかもしれない。
なら、「今日、この手で親を殺す」
そう覚悟して実家に帰ったはず。
だが、直に殺すなら一度は両親と会う。
帰省した息子に対し、
両親は話しかけてきだろう。
「おかえり。元気だった?」と。
多少は覚悟が揺らいだだろう。
後悔もしたのかもしれない。
しかしもう決めている。
決めなければならない。
そんな状況で夏油が選ぶ言葉。
『 別れの言葉 』
そんなものが仮にあったのなら、
「ありがとう」のような
『今の言葉』ではなく、
「ありがとうございました」のような
『終わった言葉』だろう。
「理由」と「責任」が乗った
親に、自分に向けた覚悟の言葉
それが『 最後の言葉 』であるはずだ。
【五条の覚悟】
五条悟にも夢がある。
実現のために命を懸ける覚悟もある。
0巻、乙骨を守った。
里香が暴走したら命がけで止めたと言い、乙骨が総監部(上層部)の敵と認定されたら乙骨の側に立つと言った。
しかし心残りがあったはず。
殺せなかったせいで呪詛師と成り、
人を呪い続けている親友、夏油傑。
パパ黒が死に、禪院家に売られそうになっていたところを預かり、保護者代わりをしていた伏黒恵。
そんな気がかりがあっても、譲れないモノのために命を懸けて乙骨の味方と言った。
五条も夏油も同様に「夢」のために、それ以外の重大な何かを、親友すらも全て捨てる覚悟をして大人になった。だから五条は過去編で殺すことが出来なかった夏油を0巻ではほぼ躊躇うこと無く殺すことができた。
夏油を逃してしまったあの日から、
五条の「理由」は
「夏油」から
「夢」へと変わった。
【最後の言葉】
五条に夏油と同様に譲れない「夢」があり、
それ以外の全てを捨てる覚悟がある。
仮にそうなら、五条の最後の言葉も
「終わった言葉」だろう。
腕を失い、呪霊を失った満身創痍の夏油。
対するは
ほぼ万全の状態で、殺しに来た『五条悟』
「詰み」
誰よりも視える自分が一番分かっている。
だから遺言を聞く。
”あのとき”と同じように。
もう、詰んだ夏油。
たった一人の親友。
知らぬ間に笑えなくなっていた。
1人になっていた親友。
1人になる自分。
譲れない「夢」
それを胸に、遺す言葉は
「あの日々」とは真逆の
「寂しいよ」
【余談(ここからはネタバレ範囲16巻まで)】
≪覚悟の証明≫
「害獣」、「害虫」、「罪人」
人間は「攻撃する理由」がある相手には簡単に嫌悪し、殺意を抱くことができる。しかしそれが「良い害獣」、「良い害虫」、「良い罪人」。例えば渋谷編以降の「虎杖悠仁」のようになると違ってくる。
だがそれらを区別することなく、私たちの代わりに等しく全て駆除してくれる「業者」や「検察官」のような人間が居るから我々一般人は平和に暮らすことができている。
「覚悟」とは、
「悪い罪人」を殺す時ではなく、
「良い罪人」を殺す時にこそ試される。
夏油は「良い罪人」も殺す覚悟をした人間。
だから守る対象だったはずの両親を殺した。
だから極力「良い罪人」との関係も絶った。
しかし美々子や奈々子のような家族は違う。
彼女たちは私的にスマホを使うし、クレープだって食べる。なぜなら彼女たちが嫌悪しているのは「悪い非術師(罪人)」だけだからだ。そして彼女たちにとって「悪い非術師」とは自分を迫害したあの村の人間やそれに近い大人であり、彼女たちが敬う夏油が嫌悪する人間だけ。
もしも夏油の家族(夏油一派)が非術師になったら夏油は迷うことなく殺すだろうが、夏油が非術師になったとしても家族は夏油を殺さないだろう。
彼女たちの嫌悪に「覚悟」は存在しないから
彼女たちが言う「非術師が嫌い」という言葉は、我々が言う「ゴキブリが嫌い」と何ら変わりはしない。
彼女たちの「理由」は、
「夏油傑(他者)」なのだ。
過去の五条と同じように。
だから美々子や奈々子たちは夏油にとって
「親友」ではなく『家族』なのだ。
≪置いて行かれたのは≫
五条は煽りとして使うほどに「孤独」を恥であると認識していた。そんな中現れた対等に会話し、時に自分のブレーキになってくれる「夏油傑」。
そんな夏油を善悪の指針にしていた。
つまり行動の「理由」にしていた。
隣合い歩いていたように見えて、
その実は親の真似をする子供のように、
「夏油の後ろを五条が歩いていた」。
つまり学生時代の彼らにとってお互いは、
「親友」だと思っていたのかもしれないし、
それほど深い関係だったのだろうが、
実際は「兄弟」の関係に近い。
故に前を歩く夏油は辛い。
強者である自分が間違えれば、後ろの人間は皆、間違えてしまうかもしれない。それ程大きい「理由」と「責任」が彼の双肩に乗っているのだから当然だ。
だからどれだけ力をつけようと、対処療法を繰り返す限り術師が死にゆく中、無意味に呪霊を食べ続けることとは違う「大義」が必要だった。「弱者生存」の信念に合う「大義」。
自分は正しい道にいる。
無意味じゃない。
目の前の闇は光へと繋がるはず。
そう思わせ、不安に対し、苦痛に対し、盲目でいさせてくれるような、『自分にできることを精一杯頑張るため』の、行動の「理由」が彼には必要だった。
もしも仮に過去編で既に五条の「理由」が「夏油傑」では無かったなら、五条が前か横にいてくれたなら、夏油が見出した非術師殲滅の「狂った理由」も相談することができていたのかもしれない。九十九由基(大人)にそうしたように。
「最強」に乗る「責任」と「理由」を、
天内を救う選択をしたように「対等」なら、
事実はどうあれそう思えていたならば、
2人で分け合えたのかもしれない。
しかしそうではなかった。
五条は信者殲滅を夏油に問いた。
あの日、五条の「理由」は、
「夏油」だと知ってしまった。
本気で相談すれば、夏油の「理由」が
五条の「理由」になるかもしれない。
「非術師殲滅」を掲げるかもしれない。
「コイツら殺すか?」と五条が提案したあのときのように、出会って間もない天内を救うために高専を裏切り、天元を敵にするかもしれない判断を下すことができたあのときのように、五条は「理由」さえあれば立派に狂えてしまえるのかもしれない。
だから高専を抜けた。
「狂った理由」を自分を追う者たちに
強制したくないから。
するべきではないと思ったから。
だから独り。相談が「できなかった」
夏油が一人になったのは、五条が最強になったからだけではない。五条が親友のように夏油の「横」にいたのではなく、家族のように「後ろ」に居たから。
置いて行かれていたのは五条悟。
「最強の呪術師」だった。
五条悟が強いのは
前を行っていた夏油傑のおかげだ。
だから五条は教師という、
「前に」立つ立場を選んだのだろう。
大切な人を二度と一人にしないために、
自ら「前」という孤独を選んだのだろう。
それが”五条悟”の「強さ」の理由。
最強の所以。
「理由」が「夏油」でなくなったあの日、
夏油を逃がしてしまったあの日、
真に夏油の「横」に立つ資格を得た。
依存する関係ではなく対等な関係になった。
夏油を殺す「理由」のおかげで、
五条は夏油と「対等」に成れた。
つまり殺す「覚悟」がブレることは
「親友」であることの放棄に等しい。
だから「最後の言葉」は
夏油が死ぬことが確定した言葉
死ぬ前提の言葉。
「寂しいよ」だろう。
≪他の言葉≫
「寂しいよ」の他に五条が夏油に遺した言葉の候補として上がっているのは主に「親友だよ」、「愛してる」、「おかえり」この辺りであると思う。
それに対する私の持論の詳細はTwitterにツリーとして5つほど繋げて載せてあるので興味がある方は見て欲しい。
五条の最後の言葉、「親友だよ」は夏油からすればおそらくそれを加味して1人になった(笑えなくなった)と言っているわけだし、「愛してる」はこれから一緒になる乙骨が言うのとこれから別れる五条が言うのは意味が違い過ぎる。独善的すぎて殺す理由感じない。「お帰り」は死後に墓の前でなら言いそう。
— あめどっと (@amedot_r) 2022年1月6日
≪関連記事≫
↓考察バチ当たり集
↓五条悟だから最強なのか?の解説
↓乙骨の術式『里香』とは
↓羂索の目的とは
↓夏油傑は日車寛見に似ている。